旅の友に音楽を

旅に出る時に必ずデバイスにインストールしていくミュージシャンがいる。それはManu chaoSquarepusher。今回チリという南北に長い国を旅していて気づいたのが、前者は意外と気候を問わないのに対し、後者はどんよりとした湿潤な気候に合うということ。南にすすむにつれ、そしてボリビアの乾いた大地をみていると無性に聴きたくなったのがphishボリビアのツアーで一緒だったイスラエリーが車の中で陰鬱なトランスを爆音でかける中、鼓膜が裂けそうになりそうな音量でノイズキャンセリングヘッドフォンでfarmhouseをリピートしていたのは今となっては笑える旅の一幕だ。

 

Farmhouse

Farmhouse

 

旅先でも音楽との出会いがある。チロエ島のQuellonというこれといって見所のない港町での出来事。パタゴニア地方へ渡るフェリーが遅延したために足止めされていた。これまでいたエリアとうって変わって基本曇り空に時折ふる雨。歩いても30分もあれば中心地を回りきれてしまう。することが無いのでさほど綺麗でもない海岸のベンチで昼寝して時間を潰す。

 

チリロックに触れる

そろそろ昼食を…と思い旅行サイトで評判が高いサンドイッチ店に入る。木の匂いがし、ほどよい活気があり「当たり」だと直感で悟る。床を傷つけないように椅子や机に手作りの靴下を履かせているこだわりが可愛らしい。チリでは珍しいオープンキッチンの作りで、カウンターに座りながら、店員さんの機敏な動きを見ながら仕込まれたランチのメインディッシュの味を想像するのも楽しい。そんな中、強面の店長がいきなり野菜を切りながら流れてくる音楽を口ずさみ始めた。スカのリズムにポップなメロディ。The SpecialsThe Clash?でもスペイン語…すかさずshazam。

Porque No se Van - Los Prisioneros - YouTube

80年代に活躍したLos Prisonersというチリのバンドでした。イギリスと同時代性を感じさせるサウンドとキャッチーなのに歌詞がポリティカル。すっかり虜になり、宿に帰り全アルバムをすかさずダウンロード。

 

想定外の空間

そろそろ夕食を…フェリーに乗る前にどうしても魚を食べたい。しかし、地元民はあまり魚を食べないのか、サンドイッチや肉系料理の看板ばかり。そんな中SUSHILOWという、スシを売りにしたレストランを見つける。チリの田舎町の日本料理ということであまり期待せずに店内に入る。

すると、ゴスメイクのウエイトレスにお迎えされ、ブルックリン系オルタナがBGMの落ちついた内装。壁にはロックレジェンドの似顔絵が飾られている。DJブースもあり、そこにはソニーカセットデッキやビクターのポータブルレコードプレイヤーがディスプレイされいる。どうやら週末にはパーティが開催されている模様。音楽好きは1人もおらず、子供グループがポテトをつまんだり、おじさまたちがビール片手に談笑をしている。私も魚のマリネをつつきながら音楽に耳を傾ける。周囲は賑やかなのにヘッドフォンで音楽を聴いているかのように落ちつける空間。 

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どちらのレストランもオーナーのこだわりが色濃く出ているのにしっかりと地元に根付いているのは何故だろう。美味しいからというのもあるけれど、日本だと客層が偏る雰囲気なのに。お店側もお客さんも楽しめること、そしてその楽しみを共有して空間が有機的に変化できること。ここに長く愛されるお店のヒントが隠れている気がする。

温かみのあるインテリアと美味しい食事。加えて自分のフィーリングにはまった音楽。五感が満たされたことで、この何も無い港町の思い出が鮮明なまま脳に記録されていくのだろうな。

 

ステキなお店はこちら。また行きたいけど、もう行けないんだろうな…まさに旅の出会いは一期一会。

 

Sandwicheria Hostal Mitos

Sandwicheria Hostal Mitos, Quellón - Fotos, Número de Teléfono y Restaurante Opiniones - TripAdvisor

 

Sushiloé

Sushiloé, Quellón - Fotos, Número de Teléfono y Restaurante Opiniones - TripAdvisor